ルワンダの教育事情まとめ

 ルワンダの初等教育就学率はほぼ100%であるにも関わらず、データ上では初等教育を最後まで修了できるのは半分程度となっています。
中等教育、高等教育と進むにつれますます厳しくなっていき、大学進学率はなんとたった一桁です。

 最初は数時間かけてでも、皆んな学校に通うのですが、途中で学業を諦めざるを得ない
その理由が気になった私はルワンダの教育に関する論文や報告書を読み、大使館でのラウンドテーブルを経て、教育問題をひと通りまとめてみました。

ルワンダの基本の教育システムあ5
義務教育を終えられない5つの要因
政府はICT教育を推進しているが?

ルワンダの基本の教育システム

 ルワンダの義務教育制度は日本と似ており、小学校と中学校の9年間となっています。
しかし現実的には義務教育を終えられる割合は半分以下、都市部と農村部の教育格差も大きいです。

 ジェノサイド後に確立した新政権は、二度とあの悲劇を起こさぬよう徹底的な教育の見直しを図っていますが、まだまだ改善点が山積み…。
まずは基本的な教育制度を把握してみましょう。

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幼児教育…3年    選択制

3歳から6歳までの子どもが対象。初等教育に備えるための重要な教育段階として、基礎的なリテラシーや社会的スキルを学ぶ。
入園率は約24%(2020年時点)。農村部では教育インフラや経済的な制約が厳しく、ほとんどの子どもは幼稚園に通えていない。

初等教育…6年   義務教育

通常6歳から12歳が対象であるが、実際には12歳以上の子どもが低学年として学んでいることも少なくない。基本的な読み書き、算数、科学、などの基礎学力を養う。就学率はほぼ100%だが、様々な要因で多くの児童は数年でドロップアウトしてしまう。

前期中等教育…3年 義務教育

3年間の義務教育/7年生〜9年生となり、日本の中学校相当。通常12歳から15歳が対象となるが、それより高い年齢の生徒が多い。科目は多岐にわたり、職業教育の準備や高校進学の基礎を築く。就学率は34.7%(2019年時点)。女子の進学率がやや低い。

後期中等教育…3年   選択制

3年間の教育/10年生〜12年生となり、日本の高校相当。通常15歳から18歳が対象だが、大人が通うことも珍しくない。
義務教育ではないため進学率はさらに低下する。生徒は大学進学コースや職業訓練コースなど、自分の進路に応じて科目を選択する。

高等教育 (大学や専門学校)

国内の国立大学や私立大学で学士号や修士号、博士号を取得することが可能。学士号の場合、文系は3年で修了できるのに対し、法学や理系では4〜5年の修学期間が必要。2〜3年で修了する準学士号(ディプロマ)プログラムもある。進学率は8%前後。

ちなみに…

 教育の初期段階ではキニヤルワンダ語が使用され、中学校以降では主に英語が教育言語として使用されている(農村部の英語普及率は低い)。2008年から英語が教育の主要な指導言語として採用されており、フランス語の使用は減少傾向にある。

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義務教育を終えられない5つの要因

 ルワンダの教育システムは内戦前とその後で大きな進歩を遂げていますが、教育の質や教育機会の格差への課題は依然として大きいまま…。
いったい、なにが原因になっているのでしょう?

ルワンダ人

自分たちだけでは、どうにも出来ないような問題がある。

あやか

教育を改善しない限り、雇用問題も無限ループがつづく。

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問題
教師と生徒の比率が合わない

初等教育の教員1人あたりの生徒数は約60人と言われる。農村部では80人前後となることもあり、教員不足が教育の質に影響を及ぼしている。就学率が半分の中等教育においては、教員1人あたり約30人の生徒。教室も人数に対して狭く、学校や教室不足も否めない。

問題
学用品や制服を用意できない

義務教育は無償だが学用品や制服などは購入しなければならない。国の教育予算不足により、教材の配布などに十分な資金がまわらず、貧困層が平等に援助を受けることは難しい。また、仮に進級条件を満たしていても、学用品や制服がなければ授業に参加できない。

むしろ教科書を持っていないのがふつうであり、子どもたちは黒板に書かれた内容を書き写すのに必死だとか。

制服の価格は学校によって異なるが、一般的には10,000〜30,000RWF/約1,250〜3,750円と高額である。

問題
教師の質に向上の余地がある

情報教育や理系科目における教員研修の拡充や、教師の専門性スキル向上に力を入れる必要がある。特に英語での指導能力に問題があり、2008年に英語が教育言語として導入されたが、そもそも多くの教師が英語教育を受けていないので適切に話せない者も多い。

公立の初等教育の教師の月給
約90,000〜130,000RWF
約10,000〜14,500円

※2022年、月給が88%アップしました(すごい)

問題
進級試験に落ちると留年する

主要科目の成績や学年期末試験の結果に基づいて進級が判断される。小学校6年生および中学校9年生の終了時に全国統一試験が実施され、試験に合格すると進級が認められる。学力評価は厳しく、一定の基準を満たさない場合は留年となる。公立学校では試験代は無料。

政府や国際的な支援団体は、貧困層の子どもたちに対して特定の奨学金や支援プログラムを提供している。

※相対的に援助を受けられない子どものほうが多い

問題
教育インフラが整っていない

農村部や地方の学校では教科書や学習資材が不足しており、子どもたちが適切な学習環境で学べていない状況である。また教師の不足や施設の老朽化、片道2時間前後など遠距離通学のために通学が困難な地域では退学率が高い。

ルワンダ政府は国のGDPの5%以上を教育に投じており、これは他のアフリカ諸国と比べて高い水準である

つまりは…

 貧困が大きな原因で義務教育を修了できないケースが非常に多く、教員不足や教育資源の不足も課題となっている。一日一食もままならい家庭の子どもは、働くために退学を選択することも珍しくない。

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政府はICT教育を推進しているが?

 ルワンダ政府・教育省は2000年より情報通信技術(ICT)を教育の中心に据え、デジタル国家を目指した教育政策を徹底しています。
初等教育から高等教育に至るまでICTの導入を積極的に推進していますが、現実はどうでしょう。

 まず、One Laptop per Child というプログラムを通じて初等教育の現場でICTを積極的に導入し、デジタル技術の利用を促しています。
このプログラムの一環で2021年までに約27万台のラップトップが配布されましたが、普及は依然として首都に偏っており不均衡である模様…。

 ICTインフラの整備においては、学校でのインターネット接続を提供するために大規模な投資を行っており、徐々に向上しているようです。
一方で電気供給率が約25%前後の農村地域でのインフラ整備が課題とされており、これによる都市部との教育格差がさらに開かないよう願うばかり。

もっと詳しく!

 都市部に偏ってはいるが、ルワンダでは初等教育から中等教育の生徒に対して、ICTを主要教科として教えている。これには、基本的なコンピュータの操作、インターネットの使用、プログラミングの基礎が含まれており、生徒たちが早期からコンピューターに触れ、基礎的なICTスキルを習得することを目標としている。ルワンダの若者がグローバルなデジタル経済で競争力を持つよう、政府は様々な政策を打ち出している。

あやか

内陸国の小さな国であるルワンダが、知識ベースの経済に力を入れるのは合理的かも。

ルワンダ人

先生もデジタルツールを活用した授業を出来ないといけない。みんなで頑張らないと!

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これらの課題を踏まえて…

 ということで、ルワンダの教育は改善点がまだ多く見られ、農村部ではICT教育を受けるなんて夢のまた夢…という非常に厳しい状況です。
これからのグローバル社会を生き抜くためにはデジタル技術の活用が避けられないとはいえ、このままでは国内でのさらなる教育格差が開く可能性大。

 教育環境に恵まれた子どもたちにはぜひともICT分野で活躍してもらいたいのですが、
やはり、その教育を受けることもままならない子どもたちに対しての支援が強く求められています。

 実は私自身、ルワンダ人から学用品や学費の援助を求められたことが何度かあります。
この支援の駆け出し段階ではまだ、個人個人の要望には応えられないのですが(個人的な経済支援をやりだすと我が身を滅ぼしそうなので)、この問題を緩和できるよう一歩一歩踏み出そうと思います。

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